アガンベン.G『例外状態』(4)

 例外状態の問題はレジスタンスの権利と問題と明らかな類似を呈している。とりわけさまざまな憲法制定議会の場では、憲法の条文にレジスタンスの権利を盛り込むことが適切か否かをめぐって、多くの議論がなされた。現行イタリア憲法の草案には、次のような条文が組み込まれていた。「公的諸権力が、憲法によって保障された基本的な自由と諸権利を侵害するときには、抑圧へのレジスタンスは市民の権利であり義務である」。……もしレジスタンスがひとつの権利ないしはひとつの義務になるとしたら(その場合には義務の不履行は罰せられうるだろう)、憲法は絶対的に不可侵で全体を包括した価値として提示されることになってしまうだけでなく、市民たちのさまざまな政治的選択も法律的に規範化されることになってしまうだろうことは間違いない。事実、レジスタンスの権利においても例外状態においても問題になるのは、要するに、それ自体としては法律の外にある行為の領域がもつ法律的な意義なのである。ここで対立しているのは、法=権利(diritto)は規範(norma)と合致しなければならないと主張するテーゼと、これとは反対に、法=権利の領域は規範を乗り越えるとするテーゼなのだ。しかしながら、これら二つの立場も、全面的に法=権利から離脱した人間的行為の領域が存在することを排除するという点では、結局のところ連帯しているのである。(p24-p26