アガンベン.G『ホモ・サケル』(5)

難民という概念(および難民が表象する生の形象)を人権概念からきっぱりと分離しなければならない。また、人権の命運を近代国民国家の命運と結びつけるアーレントのテーゼ、近代国民国家の衰退と危機は必然的に人権が使いものにならなくなっていることを含意しているとするテーゼを、真剣に受け取らなければならない。難民はありのままの姿で考察されなければならない。すなわち、難民を、生まれと国民の結びつきにはじまり人間と市民の結びつきにいたる国民国家の基礎的な諸範疇を根源的なしかたで危機にさらす、まさしく限界概念として考察しなければならない。この限界概念は、緊急になされるべき範疇の革新のために混乱を一掃することを可能にする。それによってめざされるのは、剥き出しの生が、国家秩序においても分離されたり例外化されたりすることのないような政治である。(p185