ブランショ

 西山雄二『異議申し立てとしての文学』(4)

ブランショは、〈私〉が自分に対して死のない死を与える点に、文学と革命の共通性を見る。〈私〉が自由に死ぬのはではなく〈私〉に固有な死が〈私〉の能力から逸脱することが自由の可能性の条件となっているのである。「作家は革命のなかで自己を認識する。…

 西山雄二『異議申し立てとしての文学』(3)

通常ならば、「友愛とは何か?」に答えるためには、「友とは誰か?」と問わなければならない。友と出会い、交流を重ねることで初めて、友情が具体的に感じられるようになるからだ。しかし、その順序とは裏腹に、友愛に先立つはずの友の具体的な形姿や現実的…

 西山雄二『異議申し立てとしての文学』(5)

ブランショが導き出す共同性は、個々人に固有な不幸を承認し合うことによる結束ではなく、逆説的なことに、誰にも帰属しえない不幸に曝されることで、これを分かち合うという連帯性であるだろう。不幸を通じて自分に固有な状況を確認するのではなく、むしろ…

 西山雄二『異議申し立てとしての文学』(2)

ブランショはこうしたハイデガーの議論を念頭に置きながら、死の出来事が孕む二重性を強調する。ブランショによれば、たしかに一方で、「能力の極限としての、私のもっとも固有な可能性としての死」がある。生から死への移行は〈私〉にとって、決定的な出来…

 ブランショ.M『来るべき書物』(1)

来るべき書物作者: モーリスブランショ,Maurice Blanchot,粟津則雄出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 1989/05メディア: 単行本 クリック: 5回この商品を含むブログ (10件) を見る「文学の消滅」からの引用。 だが、文学の本質とは、いっさいの本質的限定を、…

 ブランショ.M『文学空間』(3)

「文学と本源的体験」より。 ここに於て作品のもうひとつの要請が明確になるのが見られる。作品とは一個の休息の持つ減殺された統一性ではない。作品とは、少くとも作品が作品である限り、決して和解することのない、鎮められることのない、相反する諸運動の…

 西山雄二『異議申し立てとしての文学』(1)

異議申し立てとしての文学―モーリス・ブランショにおける孤独、友愛、共同性作者: 西山雄二出版社/メーカー: 御茶の水書房発売日: 2007/09メディア: 単行本 クリック: 10回この商品を含むブログ (7件) を見る 実のところ、孤独は周囲にいる人の数とは関係が…

 『来るべき書物』(3)

「アルトー」より。 詩が、思考というこの考えることの不可能性と結ばれているということ、あらわにされぬ真理である。なぜなら、これは、つねに外れ遠ざかっており、彼に、それを真に体験する地点の下方で体験することを強いるからである。これは、単に形而…

 『来るべき書物』(2)

「今どこに?今だれが?」より。 このような根源の接近こそ、作品の経験を、それを耐えている人間にとっても作品そのものにとっても、ますます脅威的なものと化するものだ。しかしまた、この接近だけが、芸術を本質的な探究と化するのであり、また、もっとも…

 ブランショ.M『文学空間』(2)

「作品と死の空間」より。 大量生産的死、組で作られる出来あいの死、リルケが常に身をそむけて来た近代世界の事物に做い、皆、何の名もない製品として、何のねうちもない品物として、大いそぎで姿を消してゆく。万人向きの、多量に作られる死だ。こういう比…

 ブランショ.M『文学空間』(1)

文学空間 (1962年)作者: モーリス・ブランショ,粟津則雄,出口裕弘出版社/メーカー: 現代思潮社発売日: 1962メディア: ?購入: 1人 クリック: 5回この商品を含むブログ (2件) を見る「文学空間の接近」から。 だから、詩の言葉は、もはやただ、日常言語に対立…