西山雄二『異議申し立てとしての文学』(5)

ブランショが導き出す共同性は、個々人に固有な不幸を承認し合うことによる結束ではなく、逆説的なことに、誰にも帰属しえない不幸に曝されることで、これを分かち合うという連帯性であるだろう。不幸を通じて自分に固有な状況を確認するのではなく、むしろ自分自身の無名性を共鳴させる仕方に共同性の端緒が確認されるのである。(p243)