バウマン.Z『アイデンティティ』(6)

もっとも広範にまた熱烈に望まれている目標が、領土、もしくはカテゴリー上の地域の「内部」と「外部」の間に、深くて通行不能な溝を掘ることです。外部とはつまり、嵐やハリケーン、冷たい突風、道端での奇襲、いたるところに溢れる危険のことであり、内部とは、心地よさや温かみ、我が家、警備、安全のことです。私たちは、地球全体を安全にする(その結果、もはや居住に適さない「外部」から自分たちを隔てる必要がない)ための適切な手段や材料を欠いているために(あるいは少なくとも、欠いていると信じ込んでいるために)、その中では自分こそ唯一の争う余地のない主人であると感じられる区面を切り開いて囲い込み、他の人々との違いを明確にしようとするのです。国家はもはや、その領土と住民を守るのに十分な力を主張することはできません。したがって、国家によって放棄された作業が地上に放置され、誰かがそれを拾い上げるのを待ちわびています。広範に広まっている見解とは逆に、次に続くものは、ナショナリズムの復活や死後の復讐などですらありません。それは、国家が運営する既存の機関に対して、この問題で支援を求めることができない状況下での、グローバルに生み出された諸問題へのオルタナティヴでローカルな解決策に対する絶望的で空しい探求なのです。(p97-p98)