李良枝「由熙」

李良枝全集

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우리나라(母国)って書けない。今度の試験が、こんな偽善の最後だし、最後にしなくてはいけないと思う。中世国語の、訓民正音の試験だった。答案用紙を書いていて、そのうちに우리나라 と書く部分に来て、先に進めなくなった。前にもそんなことはあったけれど、でも今度のは手が凍りついたみたいに全く書けなくなってしまった。答案用紙の文章は全部頭の中に入っていたし、その四文字だけ書けば次が書けるはずなのに、書けなかった。手が動かなくなった。本国の学生たちは、すらすらと答案用紙を埋めていっていたわ。横から、うしろから、前から、ボールペンや鉛筆の音がしていた。頭がくらくらとして、倒れそうだった。耳鳴りがして、目の前も揺れていた。・・・・・・私は書いたわ。誰に、とははっきりわからないけど、誰かに媚びているような感じを覚えながら、우리나라、と書いた。私は文章の中で四回も、同じ言葉を同じ思いの中で使って書いた。嘘つき、おべっか使いって、その誰かにいつ言われるかとびくびくしながら答案用紙を書き終わった。・・・・・・世宗大王よ。その誰かって、世宗大王だった。早く家に帰って、大琴を聴きたいと思った。世宗大王は信じている。尊敬している。でも、この今の、この韓国で使われているハングルは、私はいやでたまらない。なのに、우리나라って書いている。書けばほめられる。世宗大王はみんな見て、知っているわ。(p437)