川崎修『アレント』(1)

現代思想の冒険者たちSelect アレント 公共性の復権

現代思想の冒険者たちSelect アレント 公共性の復権

アレントにとって十九世紀的な秩序とは、具体的には何だったのか。それは「国民国家」と「社会」である。……アレントによれば、「社会」とは、十九世紀においてはあくまでも階級社会、すなわち貴族、ブルジョワ、小ブルジョワ・旧中間層といった階級とその利害によって区別され、組織化された社会をさす。したがって、それはこうした階級とそれによる組織化が解体した結果としての「大衆社会」――二十世紀の条件――に対置される。けれども、注意しなければならないのは、しばしば大衆社会批判の文脈において理想化されて措定されるような、いわゆる「市民社会」が、十九世紀の現実として想定されているわけでは全くないということである。(p44-p45)