浅野俊哉『スピノザ―共同性のポリティクス』(6)

スピノザの思想が環境をめぐる思想と実践に与えている影響は極めて大きい。……環境破壊が現在のスピードで進行すれば、今でも徐々に進行中のこうした全体主義的(ないし全体論的)な思想の影響力はさらに強まっていくだろう。そして、地球環境が仮に破局的な状態に至らないとしても――至らないとしたらなおさら――、「グローバリゼーション」という名の管理社会の進展と相俟って、一部の特権的な技術官僚がデザインしたライフスタイルに沿って人々の生活が一元的・均質的に統制される可能性はますます高くなる。それは、自分たちにとって住み良い環境を人々が自発的・能動的に創り出していくという民主的な契機を危機にさらすものである。(p169-p170)