ヤング.J『排除型社会』(3)

すでにみたように、近代社会において〈逸脱する他者〉というのは、広く共有された絶対的価値観とは反対の存在であり、明らかに異質なマイノリティとしてあった。共通の価値をもたない少数者たちは、社会にとって脅威であるというよりも、むしろ少数であるがゆえに社会を統合する役割を果たす存在であった。しかし、現代の後期近代では、〈逸脱する他者〉はどこでもいるようになった。……現代においては、異質性がはっきりと目に見えるような他者などどこにもいない。さまざまな文化も多元的であるだけでなく、境界線がかすんでぼやけ、互いに重なりあって融合している。たとえば若者文化でいえば、それはもはや画然とした民族集団としては形成されておらず、民族的な絶対性を追求するよりも、むしろさまざまな民族文化の組み合わせ(プリコラージュ)から形成されている。(p50)