バウマン.Z『アイデンティティ』(4)

全体的に見ても、工場の集会所や構内はもはや、根本的な社会変化の望みを託すのに十分な在庫を確保してくれそうにありません。以前にも増して脆弱で不安定な資本主義的事業構造と雇用労働のルーティンが、その内部で、多様な社会的剥奪と不公正を(結びつけるのはもちろんのこと)融合させ、まとめあげ、変化に向けたプログラムに結実させる共通の枠組みを提示しているとは思えませんし、そうした場が、差し迫った戦闘のための部隊を編成し、訓練をほどこす訓練場としてふさわしいとも思えません。社会的な不満が共有される場など存在しないのです。プロレタリア主導の革命という幻想が後退し、霧散するにつれて、社会的な不満は引き取り手のない孤児となっています。それは、共通の目的について交渉することができて、共通の戦略が導き出された共通の場を失ってしまったのです。それぞれのハンデを背負った部門は、今や互いに孤立してしまって、個々人の資源や才覚にゆだねられてしまっています。(p67)