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 ハラウェイ.D『猿と女とサイボーグ』(7)

サイボーグ――サイバネティックな有機体――とは、機械と生体の複合体であり、社会のリアリティと同時にフィクションを生き抜く生き物である。社会のリアリティとは、さまざまな実際に生きられた社会関係であり、我々にとって最重要の政治構築物であり、そして世界の変容をもたらすようなフィクションである。各国に広がった女性運動は、「女性の経験」を構築してくる過程で、この「女性の経験」という重要かつ集合的な対象の覆いを剥ぎとり、発見してきた。こうした経験は、フィクションとしても、事実としても、特段の重要性と政治性を持つ。解放の成否のいかんは、意識をいかに構築するか、抑圧――つまりは可能性――を想像力豊かに理解していけるような意識をいかに構築しうるかにかかっている。サイボーグは、二◯世紀後半にあって女性の経験であるとみなされる存在を変容せずにはおかないような、フィクションかつ生きられた経験の問題である。サイボーグとは、生けるものと死せるものとの闘いでもあるわけであるが、しかし、科学の虚構と社会のリアリティとの間の境界は、光学上の幻影にすぎない。(p287)