マラブー.C『わたしたちの脳をどうするか』(2)

そのことは、「わたしたちの脳をどうするか」というタイトルにも、はっきりと示されている。脳は「わたしたちの」脳として扱わなければならない。教育から医療まで、ニューロサイエンスの研究は社会に直接関わる事柄を多く含んでいるから、この問いが社会的に共有されることは当然だが、この本はもう少し深いところで「わたしたちの脳」を捉え直そうとしている。脳の研究が社会的な意味をもつと同時に、歴史的な意味をもった問題だからこそ、脳は「わたしたち」に関わる。本書は哲学からの脳へのアプローチだが、いわゆる「心の哲学」や「心脳問題」を扱う本とは異なり、一種のマニフェストとしての性格をもっているのは、この点にある。(p2-p3)