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 『釋迢空ノート』(3)

折口信夫

迢空の命日は九月三日である。・・・・・・九月二日の前夜祭は夕方六時よりはじまり、三日は朝の十時にはじまった。気多神社の神主さんが鎮魂の笛を吹く。日本酒、ウイスキー、ビールがそれぞれコップにつがれて、祭壇におかれる。祭壇の上方右手に「折口信夫」の写真、左手に「折口春洋」の写真。岡野弘彦氏がみずからつくり、墨書された祭詞を奏上され、「先生の歌」「春洋さんの歌」が一首ずつ献詠され、参加者全員で唱和する。それから参加者が拝礼し、そのあとタブの木の小枝を手に手にもって近くの墓地まで歩き、「もつとも苦しき たゝかひに 最もくるしみ 死にたる むかしの陸軍中尉 折口春洋 ならびにその父 信夫 の墓」という墓碑銘をきざんだ墓石の前にタブの小枝を供えて拝むのである。(pp239-pp240)