ルイ=ジャン・カルヴェ『社会言語学』(1)

 

社会言語学 (文庫クセジュ)

社会言語学 (文庫クセジュ)

 

フェルディナン・ド・ソシュールは、言(パロール)の諸行為をもとに、言語(ラング)という抽象モデルを練り上げようとした。彼のこうした意志から、近代言語学が誕生した。ソシュールの教えは、弟子たちの手で集められ、死後刊行された(1916年)。この講義録こそが、言語学における構造主義の出発点となっている。そこには、言語は「言語活動(ランガージュ)の社会的部分である」とか、「言語は一つの社会的制度である」といった断言が散見される。にもかかわらず、この書物がことさら強調するのは、「言語はその固有の秩序しか知らぬ体系である」ということや、その最後の一文で主張されているように、「言語学の独自・真性の対象は、それじたいとしての・それじたいの言語である」ということなのである。ソシュールはこのように、どうやら正当だと思っていた「それじたいとしての言語」と、それ以外のものとの間に、明確な境界線を引いていた。そして、この点に関しては、ブルームフィールド、イェルムスレウあるいはチョムスキーのような、さまざまな学者たちがソシュールを継承したのであった。彼らは誰もが、多彩な理論と記述体系を練り上げながら、自分たちの学問領域を狭く限定することで、考えが一致していた。彼らは抽象的構造でないものを研究対象として定義していたのだが、そこに該当しない一切を、彼らの関心事からふるい落としてしまったのである。(pp7-pp8)