ぺルニオーラ.M『無機的なもののセックス・アピール』(1)

 

無機的なもののセックス・アピール (イタリア現代思想2)

無機的なもののセックス・アピール (イタリア現代思想2)

 

 

 

Il Sex Appeal Dell'Inorganico

Il Sex Appeal Dell'Inorganico

 

感覚するモノとしてみずからを差し出し、感覚するモノを引き受ける。これが現代の感覚を支配する新たな経験である。それは根本的かつ究極的な経験で、哲学とセクシュアリティとの出会いを出発にしつつ、しかもアクチュアルな文化や芸術に現れた多種多様の現象を理解する鍵となるものでもある。モノの存在様態と人間の感受性という対立するふたつの次元がただひとつの現象に溶け合うことで、不気味さが生じ、謎が形成される。つまりモノと感覚はもはや互いに格闘することなく、ひとつの同盟関係を築いてしまったように思われる。そのため、冷ややかな抽象化と抑制の利かない興奮とはほとんど分離不可能で区別すらないこともある。かくして哲学の思弁的過激さとセクシュアリティのもつ何人も打ち克つことのできない力とが結合することで、並外れた何かが生まれる。われわれの時代はその何かにおいて認識されるのである。ヴァルター・ベンヤミンのひそみに倣えば、それを無機的なもののセックス・アピールと呼ぶことができるだろう。(p9)