ペルニオーラ.M『無機的なもののセックス・アピール』(11)

ところで、モノは断片とは本質的に異なっている。断片は自律的な有機性を要求する。断片は内部から自発的に生じて、自己充足的かつ本来的な統一性として措定されるのだ。それは不活性で無機的な欠片とは対極の生命原理である。断片はロマン主義的な有機的生気論の産物であり、もっとも強力な排除の装置である。この装置は生の始原的エネルギーに動かされていないとして非難するものを排除する。この断片がロマン主義者たちによって、無数の棘で周囲の世界から隔絶し、みずからの世界に閉じこもるヤマアラシやハリネズミに喩えられたのは偶然ではない。それゆえ、無機的なもののセックス・アピールは、自己省察のスパイラルのなかで身を屈め、自己充足と自己超越で完全に満ち足りてしまうようなロマン主義的な愛とは何の関わりもない。逆に浸透され所有されようとする空隙、窪み、穴はつねに、モノの中性的セクシュアリティのもとにある。(p112-p113)