オリオン・クラウタウ『近代日本思想としての仏教史学』(2)

辻が提示した近世仏教像は、仏教が新たな時代に適応するために僧侶が拠らざるべき事柄、採らざるべき態度、なさざるべき行為であったとも言える。近代と一致しないと考えられた近世仏教像を、辻が体系的に描いた背景には、彼の同時代の僧侶に対する厳しい批判的な立場だけではなく、彼自身の仏教に対する個人的な想いや、社会に弊害を与えない仏教の在り方の構想といった動機があったのである。(p263)