エスポジト.R『近代政治の脱構築―共同体・免疫・生政治』(1)

近代政治の脱構築 共同体・免疫・生政治 (講談社選書メチエ)

近代政治の脱構築 共同体・免疫・生政治 (講談社選書メチエ)

ルソーの著作に明言される善へのあらゆる呼びかけ――自由、正義、平等――は、こうした論争的射程を有しており、共同体の刑罰に言及し、共同体の不在を嘆く。人間の共同体は本質的に欠乏をともない、その語の二重の意味で、ひたすらに[delinquere(欠乏、犯罪)]をつづける。それでも共同体は、わたしたちがその一部であるかぎりにおいて、わたしたちにとって欠くべからざるものである。……とりわけルソーの後期の著作のなかで強迫観念的に繰り返される、孤独な生活へのあくなき宣言でさえもまた、共同体の不在にたいする静かな抵抗という調子を帯びている。共同体が存在しないがゆえに、あるいは、存在する共同体のあらゆる形態が、唯一の本物の共同体とは正反対であるがゆえに、ルソーは孤独なのだ。(p38)