日本思想史学会2012年度大会個人発表報告要旨

お知らせの通り、愛媛大学にて学会発表を行なってきます。

報告題名は、提出した後に変えればよかった(もっと普通にすればよかった)と思いつつ、後悔先になんとやらです。精神的余裕の無さが垣間みえるものとなりました。

プログラム見たら、午後の部の報告では、構成上、自分だけ浮いているような感じもします。

要旨については、学会のサイトを正式に確認していただきたいのですが、こちらでも掲載しておきます。

題名及び要旨は下記の通りです。

【報告題名】 幕末国学言語論をめぐる思想的位相―言霊音義派における〈言語
ノ本源〉

【報告要旨】
幕末維新期をめぐる思想史研究は、国学・儒学・洋学・民衆宗教などを対象にしながら分厚い研究蓄積がなされてきた。また、このような膨大ともいえる先行研究は、〈近代日本〉という国民国家ナショナリズムをめぐる思想的な問題についての解明を試みたものでもある。かかる先行研究において、幕末維新期に出現した思想が、やがて〈帝国日本〉を正当化する論理へと変容していく前哨であるという言及がなされており、つねに参照すべき課題を我々に突きつけている。とりわけ幕末国学を主題とした従来の研究では、〈政治〉と〈宗教〉をめぐる諸問題が錯綜する思想的状況と、複雑なパワーバランスのなかで織り成されたものであることを捉えつつ、主に〈近代天皇制〉の素地となる宗教言説の問題について関心を集中させてきたと思われる。

一方で、幕末国学のなかでも言語論や歌学をめぐる思想史的検討は、テクスト分析だけでなく、基礎的な作業も立ち遅れているのが現状である。この原因となっている背景としては、幕末国学者が著した言語論に関するテクストの内容自体が、その意味を理解するのも困難に満ちた性格を帯びていることが考えられる。
だが、鈴木朖( 1764−1837)が、「言語ハ音声ナリ。音声ニ形アリ姿アリコヽロアリ」(『雅語音声考』)と説くように、言語における意味性と心的イメージの問題を追求し、「言語ノ本源」(『同』)の所在を探る〈言霊音義派〉と呼ばれる国学者たちの存在が、幕末期にかけて広範に出現した思想史的な意味を問うことは、これまでの幕末国学をめぐる歴史像の再考にも繋がると思われる。

本報告では、かかる問題意識に即しつつ、幕末国学言語論をめぐる思想史的位相について、主に鈴木朖(1764−1837)・高橋残夢(1775−1851 )・富樫広蔭(1793−1873)・堀秀成(1820−1887)・大国隆正(1793−1871)などが著した言語論テクストの分析を通して具体的な解明を試みたい。