バトラー.J『生のあやうさ』(1)

生のあやうさ―哀悼と暴力の政治学

生のあやうさ―哀悼と暴力の政治学

Precarious Life: The Power of Mourning And Violence

Precarious Life: The Power of Mourning And Violence

自分とともに他人も傷つく存在であること、そこからもたらされる省察のひとつに、あちら側にも自分が現在知らない、将来もけっして知りえないかもしれない他者が存在しており、その他者たちに私たち自身の生が依存しているということがある。誰か見知らぬ他者に私たちの生が根本的に依存していること、この条件は自分の意思で簡単に葬りさることなどできない。どんなに自己の安全をはかろうとしても、この依存を消すことはできないのだ。権力がどれほど暴力的な営みによって自己主張したところで、私たちの世界からこの事実を抜き去ることなどできない相談である。(p4-p5)