ヤング.J『排除型社会』(5)

私たちが書いたのは、本質主義にたいする批判だった。第一に、文化には時代を超えた普遍の本質など含まれていない。社会的条件が変わらなければ、文化もそのままの姿で変わらないだろう。しかし、状況が変化するときは、文化も急速に変化する。文化および下位文化は、直面するさまざまな問題に人々が適応するための方法なのである。第二に、文化は純粋なものではまったくなく、それどころか内部に矛盾や対立、不和を含みこんだものである。最後に、もっとも重要なことではあるが、それぞれの文化は互いに切り離されて存在しているのではない。ある文化はつねに他の文化と思想や象徴を交換しており、その交換をつうじて文化の置き換えや変容が起こる。文化とは、「多文化主義」の布に織りこまれた糸のようなものではない。むしろ、文化とはさまざまな糸や色や織り目が互いに滲みあい、混ざりあったものと捉えられなければならない。あるいは、もっと一般的な比喩を用いるなら、文化とは雑種(ハイブリッド)なのであって、独立した種ではないのである。(p277)