大宮勘一郎『ベンヤミンの通行路』(8)

書物とその収蔵所たる図書館において、パリの「Fortの時間」と彼の住む「Fortの時間」とが出会うのは、自然なことであっただろう。実現しなかった事柄、顧みれなくなってしまった理念や理想が、空想や、さらには妄想との区別さえ失って、彼らに「定められた存在の真のドラマを生きる時間」をもちえぬままに、あるいはもちえなかったものとして、彼の「宮殿=時間」は姿を現す。(p252)