李良枝『刻』(5)

たばこを取って火をつけた。けむりは唇の隙間からこぼれ、化粧をし化粧をされた私に向かって、吹きつけられる。


そうしている間も、カチッ、カチッ、カチッ、と音をたてて、秒針は動き続けていた。その音以外は何の物音も聞こえない。窓ぎわの方を見た。目覚まし時計は、整理棚の上に置かれていた。


「一時五十三分」


時刻をそう読みとって、思わず身構えた。だが、すでに私の目は秒針の先から離れられなくなっている。二十一秒、二十二秒、二十三秒……秒針は4と5の間を過ぎて、7、8、そして12、1……首を振る。秒針の先がぶれる。慌ただしく煙草を消し、また鏡の中を覗きこむ。(p9-p10)