李良枝『刻』(4)

とりわけ言葉というものは、それを使用する人間の存在のすべてと深い関わりがある、言い換えるなら感受性のすべての産物であると同時に、感受性のすべてを支配し拘束する、まるで生きている生命体のようなものですから、日常的な暮らしぶりはただちに言語生活に影響を及ぼすしかないのです。……在日同胞の場合は、韓日間の不幸な歴史と深い関わりをもつ存在でしたから、このような問題ではより矛盾がひどくなり、複雑な気持ちが絡み合い、現われる様相も露骨になっていく傾向にあると見なすことができます。つまり、一日も早く母国に順応しなければならないという大義名分が、在日同胞の場合はことに深刻になるしかなく、またそうした名分以上のものを実際に韓国の社会からも要求される存在が、在日同胞だからです。(p217)