ショーペンハウアー.A『自殺について』

自殺について 他四篇 (岩波文庫)

自殺について 他四篇 (岩波文庫)

「我々の真実の本質は死によって破壊せられえないものであるという教説によせて」より。

生きんとする意志の最も完全な現象は、人間の有機体というかくも絶妙なまでに精巧で複雑な装置のうちに現われているのであるが、これもまた塵埃となって壊滅せねばならぬものであるということ、したがってまたこの現象の全存在と一切の努力とは結局は眼のあたり無に帰せしめられることになるものであるということ、――要するに生きんとするこの一切の努力は本質的に虚無的なものであるということ、これがいかなるときにも真実で率直な大自然の素朴な告白である。もしもそれが何かしらそれ自身において価値豊かなもの、何かしら絶対的にあらねばならぬようなものであるとしたら、それが非存在を目標にもっているなどということはありえないであろう。(p41)