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中世の書物と学問 (日本史リブレット)

中世の書物と学問 (日本史リブレット)

 

 この本はおススメです。中世日本の学問と書物の関係をこれほどコンパクトに解説した本は他にないと思います。中世日本では、書物にアクセスできる層は非常に限られていたわけですが、源氏物語がいかにして「古典化」したのか、とか、公家知識人が、書物が写しながら調べ、より確証のある善本を求め、書物を蒐集し、そして、写本を通しながら、注釈し、自らも新たな書物を「つくる」。その知的営為を詳しく解説しています。前近代において、和歌や漢詩は、学問の基礎中の基礎だったわけですから、歌会や和漢聯句の席で、歌を詠う、詩を賦すという営為は、その人の知識の深さ、見識の広さ、詠歌の才、詩賦の才と力量も問われる場でもあったわけで、そのような中世和歌の歴史性をひきずりながら、近世でもなお、写本文化が途絶えることがなかったという、本書の指摘は、示唆に富むものでした。短い時間で読めるので、是非。