読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

バシュラール.G『科学的精神の形成』(18)

バシュラール

われわれが指摘するたびにかかさず手短に指摘してきたことは、われわれの立場からみると、科学的思考がさまざまな認識論的障害をどのようにして乗り越えるのかということであり、 またいかにして科学的精神が誤謬の全体を修正しつつ自己形成をしていくか、ということであった。しかしこれらの指摘は散発的で、客観的態度の完全な理論を形成することからはほど遠いものであった。また多方面にわたる錯誤を克服して獲得した一山の真実にしても、この真理領域、まったく均質で、過不足なく拡大された領域、となるものではないように思われる。本当のところ、科学者がこの全般的な歓喜を熱烈に希求することがだんだんすくなくなってきた。口が酸っぱくなるほどいわれたように、学問はしだいに専門化してきたのだ。こんどは普遍性を受けもつ専門家として哲学者が綜合にのりだしてきた。しかし、じっさいは、科学者はひとつの専門から綜合を望むのであり、またそれを求めねばならないのである。科学者はみずから個人的に客観化しなかったいかなる思考も、客観化思考だとはみなすことはできない。だからもし哲学ではなくてむしろ心理学をやろうとするひとは、われわれが本書においてとった立場につねに戻らねばならないであろうと思う。心理学的にいえば、錯誤を訂正しなくては、真理はありえないのだ。客観的態度を扱う心理学は、とりもなおさず個人的錯誤の歴史なのである。(pp401-pp402)