ルイ=ジャン・カルヴェ『社会言語学』(2)

ところで、諸々の言語は、それを話す人びとなくして存在しない。一つの言語の歴史とは、その話し手の歴史である。しかるに言語学における構造主義は、言語に内在する社会的なものを頑として考慮に入れないことによって構築されてきた。そして、この方針から生まれた理論と記述が、言語の一般的研究にとって無視できない明白な貢献をしているとすれば、社会言語学という主題に費やされた本書は、そうした姿勢と正反対のことを行わなければならなかった。言語に対する二つのアプローチの間に見られる対立は、『一般言語学講義』の出版直後というきわめて早い時期に始まった。そしてごく最近まで、これらの二潮流が個別に発展、展開していくことが見てとれるであろう。(pp8)