ルイ=ジャン・カルヴェ『社会言語学』(5)

 社会的事実としての言語という考え方を徹底的に突きつめていく唯一の方法は、したがって、社会が言語に及ぼす影響あるいは言語が社会に及ぼす影響がいかなるものか、を自問することではない。そういった問いの建て方は、社会言語学的な問題を、異質で、継起中ないしは将来の問題として、言語学の問題にいま一度従属させることにあるからである。重要なのは、反対に、言語学の研究対象は、一つの言語ないし複数の言語であるにとどまらず、言語の観点から見た社会共同体にまで及ぶ、と述べることである。こうしたやり方で、いろいろな種類の社会言語学が代わる代わる試みてきた多様なアプローチは、論理的に区分・分類されうるだろう。

事実、ある社会集団のなかには、当然のこととして、さまざまな話し手、いろいろなコードのいくつもの変異、これらのコードに対する話し手のさまざまな関係、コミュニケーションの諸状況、といったものが存在する。言語学者の仕事は、したがって、これら諸々の要素の一つ一つを、そしてまたそれらの相互関係を、記述することである。(pp132)