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テッサ・モーリス・スズキ『過去は死なない』(2)

ここでわたしは、"解釈としての歴史"のほうが"一体化としての歴史”より好ましい(あるいはその逆)といったことを主張しているのではない。……むしろ、過去についての理解はたんなる知的システムではない、と認識するところから出発したい。過去との遭遇は、どんな境遇でも、純粋な知識と同時に感情と想像力をともなうものだ。過去の知識は、それによって個人としてのアイデンティティをひきだし、この世界でどう行動するかを決める手がかりとなる。わたしが言いたいのは、アカデミックな歴史は感情を敬遠しがちだった、歴史知識をまるで純粋理性のひとつの形態であるかのように扱い、それを損ないかねない情熱、恐怖、希望、喜び、といった領域を超えて存在するかのようにみなしがちだった、ということだ。……そこで、歴史の解釈的な側面とともに、情緒的な側面を当初から認めることが重要になる。すなわち、過去についての知識が感情やアイデンティティをどうとりこむか――そしてわたしたちの行動にどう影響し、影響されるか――を認識して、そのような情緒の原因やそこに含まれる意味について深く考察することが大切である。(p32-p33)