アガンベン.G『ホモ・サケル』(1)

 

ホモ・サケル 主権権力と剥き出しの生

ホモ・サケル 主権権力と剥き出しの生

 

 

Homo Sacer

Homo Sacer

 

 

例外化とは一種の排除である。例外は、一般的な規範から排除された単独の事例である。しかし、例外をまさしく例外として特徴づけるのは、排除されるものが、排除されるからといって規範とまったく関連をもたないわけではない、ということである。それどころか、規範は宙吊りという形で例外との関係を維持する。規範は、例外に対して自らの適用を外し、例外から身を退くことによって自らを適用する。したがって、例外状態とは秩序に先行する混沌のことではなく、秩序の宙吊りから結果する状況のことである。この意味で、例外はまさしく、その語源ex-capereのとおり、外に捉えられているのであって、単に排除されているのではない。

法的-政治的秩序が、外に押し除けたものを同時に包含するという構図をもっているということは、これまでしばしば指摘されてきた。……しかし、主権の構造を定義づける例外は、すさらに複雑である。外にあるものがここで包含されるのは、単に禁止や収容によってではなく、秩序の効力を宙吊りにし、つまりは秩序が例外を前にして身を退き、例外を遺棄することによってである。例外が規則にしたがうのではなく、規則が自らを宙吊りにすることで例外に場を与える。規則はこのように、例外との関係を保つことによってはじめて、規則として自らを構成する。法に特有の「効力」とは、外部性との関係を自分で維持するというこの能力のことである。これこれのものを排除することによってのみ包含するという、こうした極端な形をとる関係を、例外関係と呼ぶことにしよう。(p29-p30