シュネデール.M『グレン・グールド 孤独のアリア』

グレン・グールド 孤独のアリア (ちくま学芸文庫)

グレン・グールド 孤独のアリア (ちくま学芸文庫)

哲学者、精神分析医、芸術家のいう独我論solipsisme、あの贅沢――あるいは悲惨――は、「ひとりで」solusという形容詞と「自身」ipseという代名詞の意味を知っている者にしか起こりえない。自分の故郷がどこにあるか知っている者しか流浪はありえない。グールドは文字通りデカルトのくわだてを実行に移した。「自分には肉体がないかのように、世界が存在しないかのように、わたしが存在した場がどこにもないかのように装うこと。」このくわだては自己の存在を疑わぬ者の場合にしか可能ではない。つまり生きて存在し、自分であることを疑わぬ者の場合にしか可能ではない。そのとき孤独は存在感情をたしかに強めるはたらきをする。(p194)