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 バトラー.J『自分自身を説明すること』(5)

「第二章 倫理的暴力に抗して」より。

倫理的暴力は、私たちが自己同一性を絶えず明示し、維持するよう要求するのであり、また他者にも同じことを要求する。これは、避けがたく時間の地平内で生きる主体にとって満たすことが――不可能ではないにせよ――困難な規範である。承認し、承認されるという主体の能力は、一人称の視点とは同一でない時間性を持った、規範的言説によって生み出される。言説の時間性は自分自身の時間性を混乱させる。こうして、人が承認を与え、受け取るのは、その人が自分自身ではない何かによって自分から方向を逸らされ、脱中心化を経験し、自己同一性の達成に「失敗する」ときだけなのである。(p79-p80)