ヤング.J『排除型社会』(7)

第6章「まとまりのある世界とバラバラの世界」より。

確固たるアイデンティティを探し求め、人々は社会という船に乗り込んだ。すると奇跡のようであるが、詳細な海図には島の正確な経度と緯度が描かれていた。しかし、その島に近づいたそのとき、急に羅針盤が狂いはじめ、当てにならなくなり、アイデンティティという島の海岸と水平線は見失われてしまった。それでもなお、人々は確実性を求めてあがくことを止めない。悪霊たちが招き寄せられ、私たちのいる境界の内外から安全が失われても、それでも人々のあがきは止まらない。しかし、グローバル社会が到来すれば、このプロセスもようやく止まるだろう。そこでは、さまざまなアイデンティティがたえず交わり、互いの境界がいつまでも移り変わり続けるからである。強固なアイデンティティを切実に求めれば求めるほど、アイデンティティが崩れ去っていくというのは、まさに皮肉なことである。(p421-p422)