ヤング.J『排除型社会』(2)

現代の能力主義を、才能と努力をもって業績が評価される競技場になぞらえるなら、そこには二つの競技コースがあって、その周囲にさまざまな観客がいる様子を思い浮かべることができる。第一の競技コース、すなわち正規雇用市場では、報酬は規定の基準にしたがって配分される。しかし、そこには第二のコースへふり落とされる危険がつねにある。第二の競技コースに落ちると、報酬は大幅に減少する。また、競技に参加できる人数は限られており、観客の地位へふり落とされる危険もある。いったん観客になってしまうと、さまざまな障壁や厳格な規制があって、競技者に戻ることは至難のこととなる。そのため競技への参加を拒まれた観客は、勝利者が輝かしい賞を手にするところを眺めるくらいしかできなくなる。(p33-p34)