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 中井久夫『徴候・記憶・外傷』(5)

いわゆる「妖精との出会い」は農民世界の縁辺で起るのが常道である。それは森の端、里山、崖の傍らの泉、森を通り抜ける道で起こる。妖精はかつて繁茂していた森の名残りである老樹を棲み家としていたりする。高地に生える薬は種類によっては家に持って入ってはならない。災厄を持ち込むことになるからである。この種の迷信が平地民と山地民との緩衝帯に生きる場をみいだしている。この曖昧地帯からいわゆる「老婆の文化」が生まれた。この文化には薬草を使っての治療の達人がおり、また身の上相談の達人がいた。(p377)