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バウマン.Z『アイデンティティ』(3)

自らの労働・資本集約的作業の大半をグローバル市場に委ねてしまった国家は、愛国的な熱情の備蓄を必要としなくなっています。近代国民国家の資産をぬかりなく監視していた愛国的な感情ですら、市場の力に譲歩せざるをえず、スポーツ興行主、ショービジネス、記念日の祝祭、記念品産業の利益を増大させるために、市場によって配置転換させられています。……もはや独占を求める体制によって監視されることも保護されることも、刺激されることも激励されることもなくなり、逆に、競合する諸集団の自由競争にさらされている、アイデンティティのヒエラルヒーや序列、とりわけ堅固で強固なヒエラルヒーや序列は、構築を求められることもなければ、容易には構築できないものとなっています。アイデンティティが厳格に定義され、明確にされ(国家の領土主権と同じくらい、厳格に定義され、明白にされ)、時間を超えて、同じ認知可能な形態が保持されなければならない主な理由はなくなっているか、その強制的な権限の大半を失っているのです。アイデンティティは自由に飛びまわっている状態にあり、機転を利かしたり、道具を使ったりして、飛んでいるそれを捕まえる役割は、今や個々人にまかされています。(p58-p60)