デ・ヴリース.H 『暴力と証し』(1)

暴力と証し―キルケゴール的省察 (暴力論叢書 4)

暴力と証し―キルケゴール的省察 (暴力論叢書 4)

「暴力」のこの別の意味とは何であろうか。それはどのようにして「言説」と区別され、またそれと対立するのであろうか。「暴力」を「言説」の他者として規定することで、レヴィナスは暴力という語にきわめて広い範囲にわたる意味を与え、それに対して言説という語を、より厳密な倫理−宗教的意味合いで用いている。……言説は暴力を中断するためにやって来て、経験的にではないにせよ、少なくとも倫理的には、暴力を停止する。暴力の停止は、歴史を超えた裁きとしての、つまり歴史の終焉=(諸)目的と言われているものから独立した裁きとしての、懇願というものを通じておこなわれる。(p32-p33)