キルケゴール.S『現代の批判』(1)

現代の批判―他一篇 (岩波文庫 青 635-4)

現代の批判―他一篇 (岩波文庫 青 635-4)

革命時代は本質的に情熱的である。したがってそこには作法の概念がある。革命時代が間違った作法の概念をもっているようなことはあるかも知れない。しかしこの概念を欠いてはいない。作法などは分別の規定だと思う人があるかも知れない。しかし決してそんなものではない。その違いは格調のある文体と格調のない文体との違いのようなものである。叙情詩は自由奔放でなければならぬと思われるかも知れない、けれども叙情詩こそ格調のある文体なのである。韻文そのものが窮屈な分別の発明物ではなく、反対に叙情詩自身の妙なる発明物なのである。作法にしてもそれと同様で、それは感情と情熱と自身の発明物なのである。そして散文が格調のない文体であるように、散文的なものは型に縛られぬ奔放なもので、作法を知らず、恐るべきものを生み出す自由奔放さではなくて無気味な無性格性なのである。(p15)