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 『スピノザ入門』(2)

おそらく最初に検討すべきなのは、スピノザの書物が危機に陥れた知的なバランスであろう。すなわち、批判者たちの観点からすると、スピノザの書物は、最も「近代的」なカルヴァン主義とデカルト主義的スコラ学とのあいだに暗黙のうちに架橋された同盟関係を揺るがすものだったのである。また、スピノザの共和主義は、政治の基礎を人間の感情へと還元させることで、伝統的な社会契約論よりも過激な帰結をもたらすものであった。したがって、スピノザを論駁することは、自分とスピノザとのあいだに一線をひくために、また、暗々裏にスピノザ思想へと逢着する〔危険〕思想を抱いているという罪ゆえに告発されないために、重要なことであった。スピノザはこのことを次のように述べている。「私に好意を持っていると疑われている愚かなデカルト主義者たちが、この疑いを取り去ろうとして、私の意見や著作を絶えず罵倒し、今も罵倒することを止めません」(「書簡六十八」)。したがって、批判者は単に「あちら側」の人間のみではなく、共謀の疑いを振り払わねばならない「こちら側」の人間でもあったのである。(p50)