西山雄二『異議申し立てとしての文学』(1)

異議申し立てとしての文学―モーリス・ブランショにおける孤独、友愛、共同性

異議申し立てとしての文学―モーリス・ブランショにおける孤独、友愛、共同性

実のところ、孤独は周囲にいる人の数とは関係がなく、心理的な状態に左右されるものである。例えば、都会の雑踏のなかでよりいっそう孤独に感じられることもあるだろうし、誰もいない場所にいても孤独に感じないこともある。孤独とは「独りで在ること」を自らが感じる仕方である。周りに誰もいない場所に独りでいるという物理的な条件とは異なり、孤独は世界との関係を内省する結果、感じられ確認される状態である。〈私〉の客観的な状態ではなく、〈私〉の〈私〉自身に対する関係が孤独の感情をもたらすのである。(iV)