ブーレーズ.P『ブーレーズ作曲家論選』(1)

ブーレーズ作曲家論選 (ちくま学芸文庫)

ブーレーズ作曲家論選 (ちくま学芸文庫)

シェーンベルクは、逆に、言語の探究の例そのものである。崩壊の時代に登場した彼は、その崩壊を極端な帰結、つまり、調性的言語の「宙吊り」にまで押し進めた。この「宙吊り」という表現――ルネ・レーボヴィッツから借用した――は実際、「無調的」言語という表現よりも相応しいと思われる。なぜなら、この表現は、シェーンベルクの思考における第二の建設的な段階とは対照的に、調性を「回避する」という最初の意志を示しているからだ。そのようにシェーンベルクの作品は、二つの斜面上に位置づけられ、七年にわたる沈黙が両者を隔てている。無論そのことは、それらの二つの斜面が、多くのひじょうに好意的な人々がそう思わせたがっているように、全く関連性を持たないということを意味しはしない。シェーンベルクの作品は、バッハの作品とは反対に、音の世界の新たな組織を探究しに出発するのであり、そして、まさにそこにこそ、シェーンベルクの主要で比類のない功績があると思う。それは、音楽の形態学的な発展史における稀代の重要な発見である。というのも、恐らく、シェーンベルクという現象の尺度は、十二音からなるセリーを用いて半音階の合理的組織化を実現したという事実よりも、むしろ、セリーの原理それ自体の設定であるように思われるからだ。(p54-p55)