ブーレーズ.P『ブーレーズ作曲家論選』(2)

それに反して、ヴェーベルンにおいては、「音の明証性」が、素材を基点とした構造の創出によって獲得される。私の言いたいのは、作品の構築法がセリーの配列に直接由来しているということである。換言すれば――図式的になるが――、ベルクとシェーンベルクが、セリー書法の役割を言語の意味論的次元――セリー的でない修辞法によって結合されることになる諸要素の創造――に限定したのに対し、ヴェーベルンにおいては、そうしたセリー書法の役割が、修辞法それ自体の次元にまで拡大されている。したがって、それ以前の音響世界の基本的な図式には還元され得ない音楽思考形式の最初の要素が、ヴェーベルンとともに、既得の感受性の中に浸入して来る。(p55-p56)