江戸思想

田中康二『本居宣長』

本居宣長 (中公新書) 作者: 田中康二 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 2014/07/24 メディア: 新書 この商品を含むブログ (1件) を見る 去年の日本思想史学会にて大変お世話になった、田中康二先生の新著。本居宣長の評伝モノは、戦前からずっとあり、…

揖斐高『江戸幕府と儒学者』

江戸幕府と儒学者 - 林羅山・鵞峰・鳳岡三代の闘い (中公新書) 作者: 揖斐高 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 2014/06/24 メディア: 新書 この商品を含むブログ (4件) を見る 日記ばかりでは芸がないので、連投で読んだ本を紹介します。本書は、江戸…

丸山隆司『困惑する書記―『万葉代匠記』の発明』

困惑する書記(エクリチュール)―『万葉代匠記』の発明 作者: 丸山隆司 出版社/メーカー: おうふう 発売日: 2012/12 メディア: 単行本 クリック: 4回 この商品を含むブログ (1件) を見る 本書は、主に藤女子大学の大学紀要に掲載された、契沖における歌学と前…

一戸渉『上田秋成の時代ー上方和学研究』

上田秋成の時代―上方和学研究作者: 一戸渉出版社/メーカー: ぺりかん社発売日: 2012/02メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログを見る 1 神代一巻。以て尊重せずんばあらず。その言たるや、遼濶、奥オウ(※幽+頁のつくりの字)にして、究めず…

 吉田麻子『知の共鳴―平田篤胤をめぐる書物の社会史』

知の共鳴―平田篤胤をめぐる書物の社会史作者: 吉田麻子出版社/メーカー: ぺりかん社発売日: 2012/07メディア: 単行本 クリック: 16回この商品を含むブログ (3件) を見る本書は平田国学を〈書物〉という媒介を通して照らし出した好著だといえます。平田国学は…

 井上泰至・田中康二『江戸の文学史と思想史』

江戸の文学史と思想史作者: 井上泰至,田中康二出版社/メーカー: ぺりかん社発売日: 2011/12メディア: 単行本 クリック: 6回この商品を含むブログを見る本書は「文学研究側からの思想史学への果たし状」(p259)という趣旨のもとで、「儒学」・「国学」・「老…

 李基原『徂徠学と朝鮮儒学―春台から丁若?まで』

徂徠学と朝鮮儒学―春台から丁若〓まで作者: 李基原出版社/メーカー: ぺりかん社発売日: 2011/04メディア: 単行本 クリック: 16回この商品を含むブログ (6件) を見る現在、江戸思想史研究では「一国思想史」の克服と「東アジア思想史」への模索について、活発…

 田尻祐一郎『江戸の思想史』

江戸の思想史―人物・方法・連環 (中公新書)作者: 田尻祐一郎出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2011/02メディア: 単行本購入: 5人 クリック: 23回この商品を含むブログ (15件) を見る「通史」を書ける人は、研究者でもそれほどいるわけではない。「通史…

 「宣長」というアポリアへの斬新な挑戦―友常勉著『始原と反復―本居宣長における言葉という問題』

始原と反復―本居宣長における言葉という問題作者: 友常勉出版社/メーカー: 三元社発売日: 2007/07メディア: 単行本 クリック: 16回この商品を含むブログ (2件) を見る本居宣長という存在は、日本思想史におけるアポリアとしてあり続けている。夥しいまでに高…

 樋口浩造『「江戸」の批判的系譜学』

「江戸」の批判的系譜学―ナショナリズムの思想史作者: 樋口浩造出版社/メーカー: ぺりかん社発売日: 2009/04メディア: 単行本 クリック: 11回この商品を含むブログ (4件) を見る 三教とは、儒家の伝統的な捉え方では儒・仏・道を指すと考えるのが常識であろ…

 遠藤潤『平田国学と近世社会』

平田国学と近世社会作者: 遠藤潤出版社/メーカー: ぺりかん社発売日: 2008/02メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (2件) を見る 第三章「国学における「神典」解釈と死後の世界」より。 本居宣長は『古事記』という特定のテキストを選んで、…

 吉田真樹『平田篤胤―霊魂のゆくえ』

平田篤胤――霊魂のゆくえ (再発見 日本の哲学)作者: 吉田真樹出版社/メーカー: 講談社発売日: 2009/01/30メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 7回この商品を含むブログ (8件) を見る 篤胤説によれば、仏教は妄説として退けられるべきものであり、〈人はどの…

 宮城公子『幕末期の思想と習俗』

幕末期の思想と習俗作者: 宮城公子出版社/メーカー: ぺりかん社発売日: 2004/12メディア: 単行本 クリック: 7回この商品を含むブログ (3件) を見る 是香によれば、人の死後、霊魂は産須那社へ行きその「使令」つまり審判をうけるが、その際に生前に「仁慈忠…

 テツオ・ナジタ『Doing思想史』(3)

徂徠のテクストで何度もくり返される主題は、人の徳は、親でもなければ政治家でもなく、君子でもなければ先王でもない、天からあたえられたものだということです。権力者たちは天を知ることもできず、したがって人の徳に手を加えることはできないと徂徠はい…

 テツオ・ナジタ『Doing思想史』(2)

確かに、安藤昌益の文章は、いくら日本語に堪能でも、なかなか読めるものではない。それは漢文としては独特の漢文であり、概念も全く独自の把握によるものだった。(奈良本辰也「ノーマンと安藤昌益」) けれども、昌益の言葉の用い方は彼の批判哲学の中心部を…

 テツオ・ナジタ『Doing思想史』(1)

Doing思想史作者: テツオ・ナジタ,平野克弥,三橋修,笠井昭文,沢田博出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2008/06/21メディア: 単行本 クリック: 3回この商品を含むブログ (2件) を見る 昌益の自然協同体、あるいは「自然の世」は、よくユートピア的だといわ…

 中村春作他編『「訓読」論』(3)

同。 徂徠は、和訓顛倒の〈訓読〉を否定して、十分にこなれた「訳」を作ることを主張した。そのためには、中国語(唐話)の基礎的な素養が不可欠であるとするが、中国人がそれを味わうように読めなければならないと考えない。ポイントは、徹底した「看書」に…

 中村春作他編『「訓読」論』(2)

田尻祐一郎「〈訓読〉問題と古文辞学」より。 徂徠は、二重に「詩書礼楽」から隔てられている。一つは、空間的に日本にいることで、もう一つは、歴史的に古代から遠いことで。しかしそれは、それゆえにこそ、古代中国の「詩書礼楽」との距離を自覚し、その距…

 中村春作他編『続「訓読」論』(4)

齋藤希史「読誦のことば―雅言としての訓読」より。 文字の言語化は、日常言語によってなされたのではなく、こうした儀礼的ないし演技的性質をもつ音声言語との対応によってなされたと思われる。戦国期に見られる文字の多様な地域性もまた、それぞれの地域で…

 中村春作他編『続「訓読」論』(3)

市來津由彦「中国思想古典の文化象徴性と明治・大正・昭和」より。 文言文は、中国の統治に携わり、またそのことを望むいわゆる「士」の層において流通する。……文言を運用することは、士人層と庶人層との間に社会階層・身分区分がある中で「士」の世界に自身…

 中村春作他編『続「訓読」論』(2)

木津裕子「唐通事の『官話』受容」より。 琉球の通事は第一義的には琉球国王の臣下であった。しかし、その君臣の義を強く支えるのは、冊封国琉球の中に在って直接的に中華に連続すると見なされた。彼らの華人としての出自であった。琉球国内で確固たる地位を…

 中村春作他編『続「訓読」論』(1)

続「訓読」論 東アジア漢文世界の形成作者: 中村春作,市來津由彦,田尻祐一郎,前田勉出版社/メーカー: 勉誠出版発売日: 2010/11/15メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (6件) を見る中村春作「『訓読』論から東アジア漢文文化形成を考える」…

 中村春作他編『「訓読」論』(1)

「訓読」論 東アジア漢文世界と日本語作者: 中村春作,陶徳民,高津孝,岩月純一,沼本克明,齋藤文俊,前田勉,齋藤希史,山東功,田尻祐一郎,加藤徹,小島毅,市來津由彦出版社/メーカー: 勉誠出版発売日: 2008/09/25メディア: 単行本 クリック: 19回この商品を含むブ…

 桑原恵『幕末国学の諸相―コスモロジー/政治運動/家意識』

幕末国学の諸相―コスモロジー/政治運動/家意識作者: 桑原恵出版社/メーカー: 大阪大学出版会発売日: 2004/02/01メディア: 単行本 クリック: 3回この商品を含むブログ (1件) を見る 宣長の古語研究は現代においても評価が高い。そして現代の言語学的な立場か…