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 大宮勘一郎『ベンヤミンの通行路』(8)

書物とその収蔵所たる図書館において、パリの「Fortの時間」と彼の住む「Fortの時間」とが出会うのは、自然なことであっただろう。実現しなかった事柄、顧みれなくなってしまった理念や理想が、空想や、さらには妄想との区別さえ失って、彼らに「定められた…

 大宮勘一郎『ベンヤミンの通行路』(7)

回想者は死を忘れない。しかし彼は死に抗って回想し、書くのではない。死は彼に相対し、彼と向かいあっている。それは常に彼の仕事の本質に属することである。というのは死とは、彼が書き続けるテクストの中に存在するからである。もちろん彼は、死そのもの…

 大宮勘一郎『ベンヤミンの通行路』(6)

制作と廃物といえば、ロマン主義における廃墟の美学が念頭に浮かびそうである。これは感傷へと形を変えて今でも残存する美意識かもしれないが、これを例えばWTC跡に当てはまるのは不謹慎というより先に、時代錯誤(一掃されてしまったが)も此方のうずたか…

 大宮勘一郎『ベンヤミンの通行路』(3)

手稿には何が残されるのか。試し書き、取捨選択以前の様々な素材のメモや抜粋、書き損じ、付言、削除、落書き、乱れ中断され、あるいは執拗に繰り返される言葉やその断片、逆に決して書かれぬ言葉、滲みや擦れ、つまりは冗長や不足さらには無意味――入り乱れ…

 大宮勘一郎『ベンヤミンの通行路』(2)

「翻訳」において肝心なのは、それらの形象の真相を言葉によって透かし出すことであり、それらに「別の言葉」を充てることである。これが試みられたところに「翻訳」はようやく始まる。(p60)

 大宮勘一郎『ベンヤミンの通行路』(1)

ベンヤミンの通行路作者: 大宮勘一郎出版社/メーカー: 未来社発売日: 2007/12メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 13回この商品を含むブログ (9件) を見る 充実した体験をもたらすのではなくむしろ穴だらけの旅行、穴ばかりをもたらす旅行、それを敢行する…

 大宮勘一郎『ベンヤミンの通行路』(5)

つまりこの「岩」は、人為による建造物たるたる都市が、本来ならば空や海、さらには陸の自然的地形と区別されるはずの、その界面の「形状」として、要するに「都市のかたち」として、見出だされている。この地において建てるとは、建-立であるよりもむしろ穿…

 大宮勘一郎『ベンヤミンの通行路』(4)

ベンヤミンが旅行者である、ということは、伝記的事実として彼が繋ぐ旅行に出た、というわけだけではない、書くことの一大条件をなしていた、ということである。そして旅行は、その記述自体の律動を生み出すものとしてテクストの中に入り込んでいる。(p6)