バウマン

 『新しい貧困』(4)

やがて、市場競争に翻弄される気まぐれな雇用条件が、市民の将来の不確実性と、彼らを苦しめる社会的立場や自尊心の不安定さの主要な源泉となり、現在もその状態が続いている。社会国家が、雇用を安定させ、将来をより確実なものとすることで、その成員の保…

 『新しい貧困』(3)

近代的な生活のあり方は、持続的で止むことのない世界の更新から成り立っている。ものごとを異なったものに、おそらく、それまで以上に、そして現在よりもよくしようとする衝動、そうしたものを促す衝動にそれ以上の力を加える実践を伴う衝動が、通常、「近…

 『新しい貧困』(2)

一般に、厚生、そしてとくに福祉国家という発想は、労働倫理とは曖昧な関係にある。事実、福祉という発想は、次のような二つの和解しがたく対立する形で労働倫理の中核的発想と関連があり、それは長年にわたって議論の的となっており、現在のところ、すべて…

 バウマン.Z『新しい貧困』(1)

新しい貧困 労働消費主義ニュープア作者: ジグムント・バウマン,伊藤茂出版社/メーカー: 青土社発売日: 2008/07/24メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 48回この商品を含むブログ (13件) を見る 私たちはみな「消費者」であることが何を意味するかを、多か…

バウマン.Z『アイデンティティ』(8)

近代の歴史は、人間が思いのままに変更し、人間のニーズや欲望にあったものに「改良」できるものの限界をさらに押し広げる、持続的な取り組みの歴史でした(そしてそれは今日も変わりません)。それは、無効にされ、完全に放棄されるまでの究極の限界に挑む…

バウマン.Z『アイデンティティ』(7)

人間の条件には、一回限りの形で与えられるものもなければ、要求や改善の権利を与えられていないものもないという考え方――最初に「作られる」必要があるものはすべて、いったん作られた後でも絶えず変更できるという考え方――は、近代の初めから生まれていま…

バウマン.Z『アイデンティティ』(6)

もっとも広範にまた熱烈に望まれている目標が、領土、もしくはカテゴリー上の地域の「内部」と「外部」の間に、深くて通行不能な溝を掘ることです。外部とはつまり、嵐やハリケーン、冷たい突風、道端での奇襲、いたるところに溢れる危険のことであり、内部…

バウマン.Z『アイデンティティ』(5)

「社会」はもはや、人間の試練や過ちに対する、厳格で妥協のない、ときには厳しくて無慈悲であっても、公正で信念を持った審判であるとはみなされていません。それは、たとえチャンスを与えられても、可能な場合にはルールを鼻であしらう、とりわけ、人生と…

バウマン.Z『アイデンティティ』(4)

全体的に見ても、工場の集会所や構内はもはや、根本的な社会変化の望みを託すのに十分な在庫を確保してくれそうにありません。以前にも増して脆弱で不安定な資本主義的事業構造と雇用労働のルーティンが、その内部で、多様な社会的剥奪と不公正を(結びつけ…

バウマン.Z『アイデンティティ』(3)

自らの労働・資本集約的作業の大半をグローバル市場に委ねてしまった国家は、愛国的な熱情の備蓄を必要としなくなっています。近代国民国家の資産をぬかりなく監視していた愛国的な感情ですら、市場の力に譲歩せざるをえず、スポーツ興行主、ショービジネス…

バウマン.Z『アイデンティティ』(2)

アイデンティティは、一つの作業として、いまだ完遂されていない未完の作業として、声高な呼びかけ、義務や行動に駆り立てるものとして、はじめて、生活世界に組み入れられたのです。そして、発生期の近代国家は、その領土主権の範囲内のすべての人々に対し…

バウマン.Z『アイデンティティ』(1)

アイデンティティ作者: ジグムントバウマン,Zygmunt Bauman,伊藤茂出版社/メーカー: 日本経済評論社発売日: 2007/07メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 32回この商品を含むブログ (14件) を見るIdentity: Coversations With Benedetto Vecchi (Themes for …