2011-01-09から1日間の記事一覧

 松浦寿輝『増補折口信夫論』(4)

極めつきの「もどき」を演じている言葉を耳元で囁かれるとき、つい人はふらふらと魅入られるように、それを再度、みずからの身体で、具体的にはその「口」で、つまりは従順な「口移し」で、今ひとたび「もどき」直してみたいと欲望せずにはいられない。こう…

 松浦寿輝『増補折口信夫論』(3)

折口信夫の言語実践とともに立ち上がってくる「古代」的な聴覚空間とは、純粋状態の音響だけから成り立っている言語の織物といった非在のトポスをめぐる激甚なファンタスムのことであるかもしれぬ。表意文字で構成された概念はすべてそこから排除され、あら…

 松浦寿輝『増補折口信夫論』(2)

言語の「間接性」への苛立ちが執拗に語られているという点への興味を除けば、さしたる取り柄のない若書きの言語論にやや詳しく触れたのは、「遠近法」の崩壊した折口の言語がわれわれの耳に「強制」してくるものとは、まさしくここで語られているような「斜…

 松浦寿輝『増補折口信夫論』(1)

増補 折口信夫論 (ちくま学芸文庫)作者: 松浦寿輝出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2008/06/10メディア: 文庫 クリック: 2回この商品を含むブログ (9件) を見る 折口の言葉は、概念的な意味作用の回路を経ることなしに不意に間近なところから迫り上がり、ま…

 折口信夫『歌の話・歌の円寂する時』

歌の話・歌の円寂する時 他一篇 (岩波文庫)作者: 折口信夫出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2009/10/16メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 5回この商品を含むブログ (9件) を見る 私は歩きながら、瞬間歌の行きついた涅槃那の姿を見た。永い未来を、遥かに…